催涙雨
あたしには葵だけ…
葵だけいれば
ほかに何も望まない。
葵がいれば笑顔になれるし
葵がいれば、強くもなれるから。
二人なら、大丈夫。
やっぱり怖いけど…
葵がこうして
手を握ってくれてるから
あたしは強くなれる。
「うーみ。また泣いてる。」
葵に頬を撫でられ
そっと、キスされた。
『…うれしくて、泣いてるの。』
ふっと笑った葵は
甘い声で囁く。
「…泣き虫。」
『う、うるさいなあ‥』
照れ隠しでそっと開いた
ベッド横のカーテン。
いつの間にか───‥
激しく降り続いていた雨は弱まり
しとしとと趣を携えて
優しく雫を落としていた。
『─────‥雨…』
「んー‥?」
寝転がったままの姿勢で
背後から抱き締められ
葵の吐息が耳元で聞こえる。
背中に葵の厚い胸板を感じる。
『雨、だいぶ弱くなったけど…』