催涙雨
だけど、雨───。
『織姫様と彦星様、
会えなかったのかな‥?』
葵は少し考えるように
あたしの肩に顔を埋めてから
そっと、言葉を漏らした。
「いや、きっと…会えただろ。」
なぜか確信をもったように
言う葵に反抗してしまう
『でも、雨だよ?雨が降ったら
天の川の水嵩が増して
渡れなくなっちゃうんだよ?』
「こんなに優しい雨だ…
織姫と彦星が喜んで
泣いてる雨だろ、これは。」
『え……?』
「催涙雨。織姫と彦星が流す涙。
涙のわけは色んな説があるけど…
この時期は梅雨だし
七夕は雨になるほうが多い。」
葵の優しい口調に
心がふっと軽くなってゆく。