独り占めさせて
大学にて

木曜、午後4時過ぎの文学部第3演習室。


いつものように三々五々、ゼミの仲間が集まってきて、


談笑の合間に、担当者がレジュメを配り出す。


今日は、佐藤君と本田君の、2年生コンビが担当。


飲み会ではムードメーカーの彼らも、ゼミではいつも鋭い洞察力を見せてくれる。


全員にレジュメが回ったのを見計らい、佐藤君に声をかけた。


「じゃ、始めようか」


だけど。


「すいません、ゼミ長。
今、本田が、足りない分コピーしに行ってるんで、もう少し待ってもらえますか?」


部屋を見回すと、たしかに本田君がいない。


そのとき。

< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop