耳をくすぐる声
「宿、今ならまだキャンセル料取られないで済むかな?」
忙しいみんなに代わって宿の予約を取ってくれたのは、コイツ。
キャンセル料取られるなら、みんなで割り勘だな、なんて考えてると。
『……あのさ』
――ドキンッ。
それでなくても好きな声なのに、こんなふうに、囁くような声を耳元で聞かされるのは、キツイ。
いや、向こうはふつうに喋ってるだけなんだろうけど。
今はこの、電話、というツールが問題なだけだ。
「なに?」
動揺を悟られないように、意識的に明るい声を出す。
それなのに。