novelette
メロンパン
いつも。

学校帰りはパン屋に行く。

部活終わりの小腹につめるパンを買う。

毎日。

毎日決まってメロンパン。

別に特別メロンパンが好きなんじゃないけど。

実は。

実は誰にも言ってないけど。

私の決め事がある。
私の秘め事がある。

100日間。

こうして100日間メロンパンを食べ続けられたら、底知れない勇気が、自信が湧いてくる気がする。

そんな私の「自分ルール」。私のおまじない。



私には誰かに自慢出来る才能がない。地味でね、大人しくてね、パッとしない…クラスに大体一人はいるソレ。

だけど、私も年頃だから、皆とくだらない事で盛り上がって、しょうもない話で腹を抱えたい。

でも私はそんな勇気を持ち合わせていなくって。

だから!だからね!

メロンパンなの。

…別にメロンパンじゃなくてもいいんだけど…

100日目のメロンパンを食べたら勇気を出せるって…思うの。



毎日毎日。食べた。



日を追うごとにどうでもよくなったりもした。
ホントに変われるか疑問にも思った。

でもやめなかった。

おまじないってそんなもんだと知ってたし。

やめたくなかった。

やめたら、なんか本当にダメになる気がして。



50日目を過ぎた。

60、70。

80日も90日も。

…6、7、8、9。



あと1つ。



その最後の1つを最高に美味しく食べたかったから、いつもより部活を頑張った。それこそ動くのが辛くなるほどに。

学校の中庭で寝そべった。身体に力が入らない。
あぁ!疲れた!

空は曇ってた。今にも降ってきそうなあいにくの天気だけど…私の気持ちは晴れ晴れしてた。
部活でこんなんなっちゃったからかな。それともメロンパンのおかげかな。

しばらく横になって。
汗をかいた身体が夜風を冷たく感じる頃、最後の、100日目の、100個目のメロンパンを買いに行った。少し足早に。


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