novelette


学校帰りはパン屋に行く。
毎日決まってメロンパン。
別に特別メロンパンが好きなんじゃないけど。

こうして100日間メロンパンを食べ続けられたら、底知れない勇気が、自信が湧いてくる気がする。

そんな私の「自分ルール」。私のおまじない。

そしてやってきた100日目。
いつものようにパン屋の扉を開ける。
まっすぐにその棚へ向かう。
いつもはメロンパンが置いてある棚へ。



あれ?



棚の裏を見る…



あれあれ?



店内をぐるぐるまわる…



無い。



いつもあったメロンパンは今日は無い。売り切れちゃったみたいな…?

漏れるため息。



そういうことなのかな?
結局私はこのままなのかな?
そういうあれなのかな?

まあ…どうせただのおまじないだから。ベツにいいけど。

ただのメロンパンだもの。

………

………

………帰ろう。

静かに、入ってきたばかりの扉を開ける。

「あっ!待って!」


呼び止められた。店員さんだ。

「今日は買ってってくれないの?」

え?…あぁまあ毎日毎日来てれば覚えられるか。

「メロンパン♪」

なんだろう?その人に悪気はないだろうけど、その陽気さが無性に腹立たしかった。
振り返らずに、

だって無いじゃないですか!

…そう返した私の口調は思いの外強かった。

「あるよ?」

その言葉に振り返る。
え?だって棚には…

店員さんの手にはいつものメロンパンがあった。なんで?
バカみたいに目を丸くしてまじまじと見てしまった。

「今日は珍しく混んでね。君がまだ来てなかったから、とっておいた♪ほらいつも同じ時間に同じ物を買ってくから。」

ただのおまじない。ただのメロンパン。そう思ってたのに。

メロンパン…1つ下さい。

「どうも!298円です!」

財布の中の3枚目の百円玉を探す私に…

「そうそう。あとコレ、オマケね。ただの牛乳だけど」

なんでですか?
ちょっと困ったような目を向けた。



「コレ。100個目だろ?だから記念にさ。毎日通ってくれてありがとな。」



あぁそういうことか…
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