novelette
通された彼の部屋にあったのは静寂と黒。外は夜ではないけど窓から光が差し込まないように雨戸も、カーテンも閉められ、廊下から入ってくる明かりが足元を照らすだけだった。

彼がドアを閉めることでその光すら消え失せ、本当の暗闇が広がった。



ん?

何かにつまずいたみたいだ…

視認しようにも漆黒に満ちた世界しかそこにはなかった。

彼は「今回のはね…準備が大変だったんだ。」と少し笑った。
「あとはコレを…」
そう言って霧吹きのようなモノを取り出した。

それで部屋の壁、天井に「何か」をかけはじめた…途端。
部屋一面が鮮やかに光りはじめた。緑というか青というか、とにかく綺麗に輝きだした。

「うわぁ」

思わず息を呑んだ。クローバー以来に息を呑んだ。
綺麗で綺麗で綺麗で!
あぁっ、なんて言えばいいの?ともかく綺麗なの!

あぁっ、国語をもっとやっとけばよかった!
この素敵さを表せる言葉が見つからないよ!


「すごい!すごいよ!」
「でしょ?来てよかったでしょ?


ずっと………いなよ?」


その時の彼の無邪気な笑顔が今では不気味でしょうがない。

「いったい何をしたの?その中身は何?」
すこし高揚している私はこの秘密を知りたくてたまらなくなったの。

「これ?これはね…あれ?なんて名前だっけ?

たしか…ル…ルミ…」

その時また何かにつまづいた。

部屋が煌めいていて目も慣れてきたのか、そこに転がっていたものがうっすらと見えた。






(どうりで静かなハズだ…)


いつもはもっと手触りの良いカーペットはカピカピで…鉄の匂いがする。



(いつも笑顔で迎えてくれるおばさんはここにいるんだもの…)



「思い出した!ルミノールだ!」







(きっとあの壁あたりが「私の光」ね?…嗚呼…キレイ…)



その素敵で綺麗な「光る部屋」を今もずっと見ている…

そしてこれからもずっと…
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