マイ*スノーグローブ
タイトル未編集
疲れた。
もうだめだ。
こんな仕事やってられるかボケ。
何でスケベ上司の世話までこっちがしないといけない。
金積んで専門の店に行け。
辞めさせていただきます。


私の作った大事な会議に使うはずの書類が途中からこの文面になっていてそのまま提出されていた。

…言い訳を言わせてもらえば、あの時私は相当疲れて追い詰められていた。

労働基準法なんて物は一切無視された勤務時間。
精神不安定で眠たくても寝付けない日々。
尽くしていたのに最近全く連絡が着かない恋人。
気持ち悪い上司のセクハラ。
そういった繰り返しで貯蓄したストレス。
悲しくもないのに一人でいると勝手に流れ出てくる涙。

それでも頑張って朦朧とした頭で仕事をこなしてなんとか食らい付いていたのに、自分でも信じられないことに無意識でその生活の幕を引いてしまった。

色々と限界を超えていたのにそれを無視して体を酷使していたため『私』が壊れてしまったのだろう。

自分の手で書類を上司に渡し、その場で突き返されて初めて自分のやらかしたことに気が付いた。

(ああ、これが私の本当の気持ち・本当の願望なんだ…。
こんな私でも雇ってもらえてるだけ嬉しい。まだやれる、って思っていたはずだったのにな…。)

セクハラ上司がゆでダコのようになりながら目の前で喚き散らして私のことを罵っているのは見た目で理解出来るものの耳にはなにも聞こえてこない。

『私』が体を捨てて近くから様子を観察している感覚。

この部屋にいる全員の視線がこちらに向いているのがわかる。

同情や好奇の目を向けられる中、深々と頭を下げると肌をピリピリと震わせていた振動もとい不快な騒音が静まる。

「お世話になりました。」

静まり返るオフィス。
私は自分の席に戻り数少ない私物を鞄に突っ込みそのまま会社を出る。

仕事を辞めてみると今まですがり付いていた全ての事がどうでもよく思えてきた。

ちょうど良い機会だから彼氏とも別れよう。

無駄とは思いつつも、とりあえず電話を掛けてみる。

~電波の届かない場所にあるか電源が入っていないため…

「…メールしておけば良いか。」

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