王子様は有料です。
1. お金で買えない価値がある
「泣きそうな顔、めちゃくちゃそそられるんですけど」
知らない制服を着た男の子が、あたしの腰に手を回した。
嫌だ、嫌だって……全身が悲鳴をあげている。
だけど動けない、怖くて。
後ろで仲間の男の子二人も楽しそうにケラケラと笑っている。
「は、離して……っ」
「良いから良いから、俺たちと遊ぼーよ」
「……やっ、やだ!!」
伸びてきた手を振り払ったときだった。
「その子から……手、離してくれないかな」
ジャリっと音がして、咄嗟に顔を向ける。
するとそこには、さっきまで苦しそうな表情で地面に足をついていた男の子。
フラフラと立ち上がったかと思えば、口元に滲んだ血を拭い
「会長さんに怒られちゃうから、手だけは出したくなかったんだけど」
「はあ? なんだお前……」
「好きな子泣かされちゃ、話は別だよね?」
そう言って、ニヤリと余裕そうに微笑んだ。