[改良版]小学生と暴走族【夜桜】
「やめろっ!」
兄ちゃんの声が倉庫に響き渡る。
兄ちゃんは残っている敵には目もくれず、麻白と私のほうへ走ってきた。
「ずいぶんと滑稽な光景だよな? 青」
麻白が私の耳元でつぶやく。
「あの流維がお前みたいな奴のために必死になってんだぜ?」
答える余裕すらない。
流れる涙の理由は痛みだけではない。
背中の痛みと、また切られるのではないかという恐怖。
怖いと思うのは、あのタンスの隙間から殺されるお父さんを見ていた時以来だ。
「……青っ!」
兄ちゃんが叫んだときに目の端に見えたもの。
それは、再び向かってくる麻白のナイフだった。