cafe au lait
「奥さんが心配するから、電話して下さい。それから、今日はウッドチェアの修理依頼が入ってます。車で回収もしてきてください」
先ほど書き留めたメモ用紙を彼に手渡す。
「わかった」
短い返事。低い声で、喉仏がかすかに上下した。おが屑のついたシャツを払うと、彼は手にしていた工具を床に置く。
「はらへった。十和子なんか作って」
日比谷 遥斗(はると) 二十八歳。 妻子持ち。 お子さんは、この春に産まれる。性別は女の子だ。
専門学校を卒業後、一人でこの工場を設立運営。遥斗の作る家具は、大量生産ができない。だけどとても人気がある。
無造作な髪型に、キリっとした整った顔立ちで、背は高く、広い胸板に、逞しい腕、話をする度に上下する喉仏に私はいつも目眩する。