cafe au lait


 遥斗の、やっぱ十和子だな、に昔から弱い私は口角が上がりそうになるのをグッとこらえて、工場にある簡易キッチンに逃げ込んだ。




 遥斗は、こんな私を女にした唯一の男だ。


 自慢じゃないけど、昔から恋愛事と私は対局に位置しているらしい。

 髪型も校則に従い、制服のスカートもひざ下丈十センチ。性格も暗いメガネ女なんか誰も相手にしてくれなかった。


『十和子、頼む。一回ヤらせて』


 一番最初に、遥斗から頭を下げられたのは私がまだ中学生の頃。


 遥斗が何を頼んでいるのか意味が分からない私は、必死に頭を下げる従兄に「いいよ」と言ってしまう。


 私の人生最大の過ちだ。



 誰もいない遥斗の家で、痛くて泣き叫ぶ私を相手に、遥斗は明日の彼女とのデートで恥をかかないように念入りな予行演習を繰り返した。



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