cafe au lait
「この椅子さ、脚の太さが四本ともバラバラなのに妙なバランスで保たれている」
遥斗は、私が「うるさい」と言った意味に気がついていないらしい。
いつもこの調子だ。
アモーンド型の瞳が、ジッと……そのファンタジーな椅子を見つめる。
その瞳は、一重にみえるけど、まばたきをした瞬間だけ二重になることを私は知っている。
「山で拾ってきた木を適当に組み合わせて作りましたって感じなのに、丈夫で……座り心地は最高だな」
遥斗は、修理品に遠慮なく腰を下ろす。ギシッと大きな音が鳴る。
背を預けて深呼吸をすると瞳を閉じた。
「ふう……」
遥斗が大きく息を吐き出すと、また椅子はギシッと音をたてる。
それは、まるで遥斗が座ることを拒んでいるみたい。
「どこを治せばいいんだろう……解体しても同じように組み立てる自信はないな…………」
瞳を閉じたままブツブツと呪文を唱える。
脳内で考えたことは全て声に出さずにはいられない性格だ。
「うるさい」と文句を言った私が間違っていたのかもしれない。
羅列した数字に視線を戻すと、電卓と向き合う。
ファンタジーな椅子は、またギシッと鳴いた。