cafe au lait
だから、一つだけ心配なのは、この店が潰れてしまわないか? てことだ。
それに、あのファンタジーな椅子の修理費を払ってもらえないのも少し困る。
そうだ……困っている事といえば、遥斗を丸一日悩ませた椅子のことにも困っていた。
「あの椅子治りますか? トーコさん」
エスプレッソマシンから蒸気が立ち上る。
「現時点ではお答えできません」
憶測で物事を話すのは好きじゃない。
遥斗は、朝がくる事を忘れるほど熱中して作っていた本棚を投げ出し、昨日はずっと椅子と向き合っていた。
そうだ! 本棚の納期が間に合うのか? という問題にもとても困っていた。
今日は困ったこと尽くしだ。
「日比谷遥斗は、この街が生んだ天才職人……会ったの初めてでしたけど、かなりイケメンでしたね。
トーコさんの従兄って本当ですか?」
彼の声音に、思わず視線を上げる。