cafe au lait

 だから、一つだけ心配なのは、この店が潰れてしまわないか? てことだ。

 それに、あのファンタジーな椅子の修理費を払ってもらえないのも少し困る。



 そうだ……困っている事といえば、遥斗を丸一日悩ませた椅子のことにも困っていた。


「あの椅子治りますか? トーコさん」


 エスプレッソマシンから蒸気が立ち上る。


「現時点ではお答えできません」


 憶測で物事を話すのは好きじゃない。

 遥斗は、朝がくる事を忘れるほど熱中して作っていた本棚を投げ出し、昨日はずっと椅子と向き合っていた。

 そうだ! 本棚の納期が間に合うのか? という問題にもとても困っていた。


 今日は困ったこと尽くしだ。



「日比谷遥斗は、この街が生んだ天才職人……会ったの初めてでしたけど、かなりイケメンでしたね。

 トーコさんの従兄って本当ですか?」



 彼の声音に、思わず視線を上げる。


< 19 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop