cafe au lait
「今朝のエスプレッソの味は、いかがですか? トーコさん」
間延びしたような、ゆっくりとした彼の声。
発言してから、余裕で一拍置いて私の顔をのぞき首を傾げる。
「トーコじゃなくて、十和子(トワコ)」
この古びた名前はあまり好きじゃない。
彼は、そんなことはどうでもいいんですよ、という態度でカウンターに頬杖をつく。
この店は、小さくカウンター席が五つに二人掛けのテーブル席が三つ。 けれども、この時間帯に私は他のお客さんを見たことがない。
「美味しいよ。とても。そのエスプレッソマシンは今日も的確な仕事をしてる」
磨きあげられて鏡のように光るエスプレッソマシンを見てから小さく頷く。
機械は正確でロジカルだ。信用できる。
ころころと心変わりしたりしないから。
もう一度エスプレッソを口に含むと、その味を堪能した。