cafe au lait
カップに残る深い苦味
────チリンチリンと鈴がなり、cafe au laitを出ると外は雨が降っていた。
後ろ髪を引かれる切なさは、雨のせいで二割増しだ。
霧雨の小さな雫が、はらはらと降っていた。
透明のビニール傘を開くと、無数の水滴が落ちてくる。
もうすぐ春だと感じていたのに、今朝はとても寒い。
舗道の雑草についた蕾も雨に耐えながら、その花弁を硬く寄せあっている。
「十和子」
cafe au laitを出てからすぐに一台のシルバーの軽自動車が、路肩に泊まりハザードランプを点滅させた。
自動でスライドする窓から遥斗が顔を出す。
「乗っていくか?」
「いいです」
私は傘を頬と肩で支えて、腕時計を確認する。
このままゆっくりと歩けば、適度な時間に工場に着ける。