cafe au lait
遥斗には素敵な奥さんがいて、もうすぐ子どもが産まれる。
動揺なんてする必要はない。
動揺なんて……
「十和子」
その低い声が、私を呼ぶと心臓がギュンと音をたてて締め付けられてしまう。
遥斗は「よいしょ」と掛け声をかけて椅子を作業台から下ろした。
「わかるだろ? 十和子は俺の特別。俺たちの間にあるのは確かな絆だけ。それで十分だ」
「うん……」
「十和子、座ってみて」
通帳からゆっくりと顔を上げると、遥斗が椅子を指差す。
「この椅子に、座ってみてって言ったの」
遥斗はもう一度椅子を指差す。
「わかった」