cafe au lait
────カタンと小さな音が、工場(こうば)の出入り口に響く。
うちの工場は人の出入りがほとんどないから、入口はいつも開けっ放しだ。
「トーコさん?」
そこに立ち尽くしたのは、cafe au laitのバイトくん。
こんなの、見られたくなかった。
この町は、狭い。 遥斗は有名人だ。
彼が既婚者であり、奥さんが私じゃないことを知っているはず。
「……東條 胤(つぐむ)だっけ?」
「それ、俺にとって大切なものなんだけど」