cafe au lait
爽やかなコクと旨味
「どっちが大切なんだ? 椅子か? 十和子か?」
「やめてよ遥斗、彼に迷惑! それにお客様だよ……
ごめんなさい。胤くん、勝手に座って」
「どっちも大切なんだよ。手を離せ」
胤くんは、いつもカウンターの向こう側で穏やかな笑みを浮かべている彼とは別人みたいだ。
長い足であっという間に遥斗に掴みかかる。遥斗が抵抗したので二人はおが屑の山に倒れ込む。
「キャッ!」
二人はおが屑を撒き散らし揉み合いになる。
「結婚してるだろっ」
「お前に、関係ない」
罵り合いながら、工場がめちゃくちゃになっていく。
「十和子に相手にされてないの、わからないのかよ!」
遥斗の言葉で、胤の動きがピタリと止まる。
「…………そんなこと言われなくても、わかってる!」