cafe au lait
────「よし、鳴らなくなった!」
遥斗が腰をかけても、もう鳴かなくなった椅子。
最終的に、職人遥斗は音の出る部位に薄い布を挟むことにしたらしい。
本当にそれは最終的な手段で、元ある形に手を加えることは遥斗は好きじゃない。
布の厚み分、サウンドペーパーで木を削り……音がしないか確認しながら作業を行う。
根気のいる作業で、うっかり木を削りすぎてしまうと椅子は機能しなくなってしまう。
遥斗は、昼食も取らずに作業を続けた。
「十和子」
目を輝かせて振り返る遥斗に、小さく頷いた。
もう鳴かない椅子に、なんだかとても寂しい気持ちになると同時に、遥斗が遥斗じゃない気がした。
「すごいよ、やっぱり遥斗だね」