cafe au lait


 胤くんは、真剣な顔をした。



「だから、最初はこんなシチュエーションじゃなくてもっと大切にしたい。

 トーコさんにいっぱい俺のこと知ってもらって、まずはデートとかして、それから手繋いで、キスしたり……とか? うわ、何言ってんだろ。恥ずかしすぎる」




 胤くんは、顔をくしゃっとさせてうつむいた。



「とにかく、まだ時期がきてないってことです。でも、トーコさんが俺を頼ってくれてよかった」



「胤くん……」


「そんな顔して名前呼ばないでくださいよー! トーコさん、さっきまで俺の名前すら興味なかったじゃないですかっ!」


「胤くん、ごめん」


「いいです、俺、絶対トーコさん助けます。でも、問題が……」


「なに?」


「あの職場には、行かせたくない」


「それって仕事をやめろってこと?」


「そういうことです。さっき、あんな場面目撃して俺なりに考えました。トーコさんはアイツと離れるべきです。だから、考えてみてください。ここは田舎だけど、再就職先なら、俺もあてがありますから」


 遥斗から離れろと言ってくれた。私もずっと思ってたことを、彼がかわりに熱弁してくれた。


 救われた……抱かれるより、ずっと欲しかった救いだったのかもしれない。





< 47 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop