cafe au lait
「ねえ、そう言えば、胤くんって、いくつ?」
もたれるように深く椅子に落ち着いているに、 彼はトレイを手にして私を見下ろす。
フワリと柔らかな湯気が、コーヒー豆の良い香りを撒き散らす。
「嬉しいな。俺に興味持ってくれるなんて」
胤くんが「お待たせしました」と、いつもと違うカップを私の前に置く。
「注文と違う……」
そのカップは、いつもエスプレッソを並々と注いだ、小さくて真っ白なカップじゃない。
淡いピンクに、ベージュの小花が咲き乱れた女の子らしさと、微笑みたくなるような可愛らしさを備えたカップだ。
……私には、似合わない。
しかも、中身はエスプレッソではなくカフェラテ。
「注文は、受けていません。トーコさんは、挨拶をしながら店内にやってきて、カウンター席に座ってからこのテーブル席に移動して、その椅子に座って気持ち良さそうにしていただけです」