アーティクル
第二話 ロンロンでパスタを
 百貨店の地下に、龍龍(ロンロン)という、パスタ屋があった。

 地下なのに全面ガラス張り、まるで、客が陳列されているかのようだ。
 客も従業員も女性だらけのお店で、男性が一人で入るには、かなりの兵(つわもの)でなければならない。

 そこのメニューのひとつ、牛筋煮込み入りカルボナーラ。
 カルボナーラなのに、クリームっぽくなく、むしろチーズの味がする。
 そのなかに放り込まれた、甘辛く煮込んだ牛筋の塊が、絶妙の触感を醸し出すのだ。

 すらりと長い足を組んで、キリリとした雰囲気の倫子(りんこ)は、その肉塊をフォークで弄んで久しかった。

< 11 / 62 >

この作品をシェア

pagetop