アーティクル
 そんな倫子の彼氏である、ジェームス・キューリックがようやくやって来たのは、彼女のカルボナーラが既に冷えてしまってからであった。

「ジェームス、遅いよ」
「ごめんね、リンコ。レポートが通らなかったんだ」

 ジェームスは倫子と同じ大学に通う留学生である。
 理由を聞いたことはないが、ジェームスは日本文学を専攻している。
 日本が好きで、日本語が微妙に上手いアメリカ人だった。

「私のカルボナーラ、冷めちゃったわよ」

 ジェームスは、女性の倫子より肌の色が白かった。
 目の色は透き通ったブルーで、髪の色はブラウン。背が高く、美形。
 モテそうなものだが、全く自国の女性には興味がないという。

 いや、それだけではなかった。

 実は、変人なのだ。
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