アーティクル
 疲れ果てた夕陽が、放射線状に光を放ち、山の陰に消えるように沈んでいく。

「リッちゃん、ボクにも、キュウリの気持ちが、痛いほど解ってきたよ」

 もっと優しくしてあげれば良かった。
 手を差し伸べれば良かった。

 律子が賢司に投げ掛けたものは、残酷で、切ない、断片的な言葉の羅列であった。

 賢司は立ち上がって、後ろに停めていた自転車に跨った。

「じゃ、またね。明日もまた、必ずここに来るから」

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