アーティクル
「キュウリはね…、本当は…ね、泣き虫なの」

 賢司は、律子がいつかそんなことを言ったのを、思い出した。


 賢司は真っ赤に染まった土手の上を、自転車で走った。
 ざわついた草の音に、惑わされまいと、賢司はペダルに力を込めた。


 あの時、律子が言った断片的な言葉。
 
 ワ…タ…、カ…サ…レル。 

 賢司には、未だに、その沈痛な律子の声なき声が、聞こえる。



第三話 『キュウリの気持ち』

完結
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