アーティクル
 トイレの王様って、誰だろう?

 ふと、そんな疑問を、四才になる律子は思い付いた。

 トイレから出られない退屈さと、お腹の痛みから気を反らす、子供の知恵である。

「ねえ、どう思う? そこの置物の犬君」

 傍らのボックス棚に飾ってあるダルメシアンに、律子は話し掛けた。

「えっ、分からない? 駄目よ、分からないは禁止なんだから」

 ダルメシアンは首を傾(かし)げている。

「どうしてもっていうのなら、パスを認めてあげる。但し、一回きりだから、よく考えておいてね」

 律子はそう言うと、次に窓辺から律子の方を向いている、皇帝ペンギンのガラス細工に話し掛けた。


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