アーティクル
「リンコ、下がって」
 ジェームスはブーツの爪先で、南京錠を蹴った。
 十回ほど繰り返すと、南京錠で止めていた金具が、箱の縁ごと破壊された。

「リンコ、これ、安全靴だよ。爪先だけで、1トンまで耐えられる」

 ジェームスの説明を捨て置き、倫子は緑の箱を開けた。
 体の細い大人が、やっと入れるぐらいの穴になっていた。

 律子は中を覗いたが、暗くてよく見えなかった。
 今まで閉じ込められていた、ひんやりとした空気が、倫子の頬をなぞった。

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