アーティクル
第九話 ベイビードールの誘惑
 賢司は思わず唾を飲み込んだ。

 デニムの短パンを履いた倫子が、賢司に形の良いお尻を突き出し、窓口で電車の切符を買っている。
 赤いヒールのつま先で、床をトントンと叩いていた。

 Tシャツと短パンの隙間の、引き締まった腰回りと、剥き出しの白い腰骨が、会話をする度に方向を変える。
 白米のように透き通ったお尻の上の溝が、僅かに見え隠れした。

 「Baby doll」と書かれたTシャツの背中の文字は、カウンターに載せられ窮屈で息が出来ない胸元や、両脇から引っ張られて、何本もの横シワを作って、困った顔をしていた。

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