アーティクル
「電車が来るまで、少し時間があるわ」

 倫子は時計を見ながら、賢司に言った。

「喉が渇いたでしょう? ジュースを買ってきてあげる」

「ねぇ、僕はいったい、どこへ行くの?」

 賢司は不安になって、尋ねた。

「お祖母さんの所よ。夏休みに行ったことあるでしょ? 憶えてないの?」

「うん…」

「仕方のない子ね、暫くはそこにいるのよ。わかった?」

 倫子はしゃがんで賢司の目の高さに合わせ、なだめるように言った。
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