アーティクル
 律子が見ていたものは、去年のカレンダーだった。
 一年間も、時が止まっている。

 お母さんは、何も気付いてはいない。

「何も、気付いてもくれない」

 堪えきれずに、律子はぽろぽろと、静かに涙を溢した。

 傍らにいたダルメシアンは、律子を慰めるように、首を傾げ、ガラスのペンギンは心配そうに、律子を見上げる。
 壁に吊り下げられたカメは、甲羅で泣いていた。

 トイレの住人は、みな、律子の味方だった。
 律子のささやかな王国、そして温かい住人たち。

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