[短編] 昨日の僕は生きていた。
「学校の準備するから出ていって! 女の子の着替え覗く気?」

 その剣幕に僕は頷くしかなかった。



 香織ちゃんの家から出る(抜ける)と、町の住宅街に出た。

 冬だけど、寒さはちっとも感じない。きっと幽霊だからだろう。

「家に戻ろう……。」

 独り言を呟くと、僕は家へと戻っていった。

 家のリビングに入ってみると、母さんが洗い物をしていた。
 父さんはテレビで朝のニュースを見ている。

 2人共無言でちょっと怖い。

「あなた、今日はお通夜の準備よ……。」

「そうだな……」


 く、暗っ!

 葬式みたいな雰囲気だ。いや、実際に葬式はあるんだけど。昨日までの明るい家族団らんが嘘のようだ。

 人が死ぬとはこういう事なのか。

「雪彦、やっと大学も決まったのにな……」

「やめてよ! 落ち着いてからそういう話はして。悲しくなるわ……」

 なんだか両親に申し訳なくなってきた。
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