誠の紅桜に止まる蝶~土方目線~
「なあ沙織。」

「なあに?」

「俺らは、このひらひらと舞い落ちる桜の木の下で出会ったよな。」

「うん。そうだね。」

そう言って沙織は手をそっとだし桜の花びらを掴む。

「もう、あれから10年も経つんだね・・・」

そうつぶやく沙織のことばにはたくさんの深い響きが含まれていた。

「ああ。そうだな。」

そして俺はそっと沙織を抱き寄せる。

「お前と出会った桜の木の下でお前と恋仲になってこの風景をみるなんてあの時はまったく思ってなかったな。」

「ふふ。そうだね。それに私左之助さんのこと初め苦手だったし。」

「え?!」

俺の顔をみていたずらっぽく微笑む。

「だって、いつでも遊び歩いているし、女の人ならだれでもいいのかしらって思ったんだもん。」

俺はなにも言い返せなくて黙り込む。

確かに若いころの俺は遊びあるいていた。

だけど

沙織とであってからはなぜか遊び歩かなくなった。

そんなことを思っているとそっと沙織が俺の手に桜の花びらを握らせる。

「だけど、最初の印象なんてあてにならないわね。」

「え?」

「だって。今私はどうしようもなくあなたが愛おしいんですもの。」

そう言ってまるで桜が綻ぶように微笑む。
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