ハスキーボイスで酔わせて
私の知らない事実がどんどん窮地へ追い込む。
「そういえばつい一昨日もその子と昼ご飯食べに行ってたっけ。スタジオに二人揃って戻ってきた…!」
窓の外を見つめながら話していた諏訪さんが、ふと私に目線を合わせる。
目を見開いて驚いた先には、
俯きながらポロポロと涙を零す私の姿があった。
「彩ちゃん」
「私…、ホントに春樹さんの彼女でいいんでしょうか…っ」
優しく肩を抱いてくれる諏訪さんの温かい手の温もりを感じながら、
自問自答しながら泣き続ける。
春樹さんの恋人であることに不安が常につきまとう私にとって、
諏訪さんの証言はあまりにも酷過ぎたのだ。
愛し愛されてることは肌で痛いぐらい感じるのに、
今は何故かその痛みすら気づけないほど追い詰められていた。