ハスキーボイスで酔わせて
そして旅行当日……。
「ーー母さん!母さん!!」
黒崎家にドタバタと響く叫び声。
父親が勢いよくリビングに顔を出すと、
母親は一人静かにお茶を啜っていた。
「彩がおらんぞ!荷物も全て無い!!」
「あらまぁ…困りましたねぇ」
ふふふと笑いながら優しく話す母親。
それは全ての経緯を知った上での余裕ある笑みだった。
「…大丈夫かなぁ」
一人新幹線に乗って、流れ行く景色を眺める私。