ハスキーボイスで酔わせて
変装用のダテメガネに帽子を被り、センスのいいおしゃれな服装に身を包んだ春樹さん。
その容姿は普段から見慣れてるはずなのに、
何だか胸が締め付けられるほど苦しい。
「…っ!」
私は思わず春樹さんの広い背中に腕を回し、ギュッとしがみついた。
「彩…?」
突然の行動に春樹さんも不思議そうな表情で見下ろしている。
「寂し、かったよぉ…」
厚い胸板に顔をうずめてボソッと小さな声は、
周りの街の雑踏に消され春樹さんの耳には届くことはなかった。