ハスキーボイスで酔わせて
電話口からかすかに聞こえるのは女性の声だ。
一緒にいるときに親から連絡なんて珍しいな。
「え…?」
その時、彩の声色が変わったことにすぐ気づいた。
そして一気に様子がおかしくなったことも。
「…どうした?」
数分話し電話を切った彩に後ろから顔を覗き込むように聞くと、
携帯を持つ手がガタガタと震えているのが目についた。
そして顔色も真っ青になっている。
「お父さんが…、お父さんが…っ!」
そう言った彩の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。