なつものがたり
それからまた、長い間 見つめ合う。
希鷹のこんなにかなしそうな顔、初めて‥
初めて‥じゃないや、
全てを察知してしまった。
そっか、…そっか。
いろいろな覚悟を決めたはずなのに耳をふさぎたくなる。
暗くなりだした空を、雲を、海を恨めしく思う。
「果歩、ごめん。」
「なにが?
今日、下着姿見たこと?
こないだ学食でコロッケ半分食ったこと?
えーっと、あーうん。
はぁ。」
いつもみたいにふざけたいのに、希鷹の真剣な眼差しがそれを阻止する。
「蒲田さん、っしょ?」
希鷹が今までで一番夢中だった人。
この寂しい顔は、蒲田さんと別れた時のあの日の顔と同じ。
彼女は希鷹に、こんな顔をさせることができる。
「果歩にはお見通しか。」