なつものがたり
帰りたくない!なんて、言えるはずもなく握られた手をさりげなく紐解く。
この手が離れれば希鷹は蒲田さんのものになってしまう。
この手をもう一度、握り返すことはできない。
「うん、帰ろ。
このままだと朝焼けを拝むことになりそーだし。」
「それもいいな。」
なんて、ニヤッと笑う希鷹は月の光を浴びて海の光を受けて見惚れるような綺麗さだった。
そんなセリフを軽々しく言う希鷹は、やっぱりサイテーで “あたしの大好きな人” だった。
いつまでもいつまでも、
あたしのそばにいてくれればいいのに。
だめだ。
また、泣きそう。
なんだよ、案外あたし、まだ女子っぽいじゃんか。
「・・・ほ・・・果歩?」