なつものがたり
「来週さ、夏祭り、いこ?」
高校生の頃よりも成長した俺らカップルは、バイトやお互いの付き合いのせいで毎日会っていた高校生時代に比べると会えない日が続いた。
あの告白から一週間後、夕飯を食べながらの会話。
一週間ぶりに会う百合子はやっぱり綺麗で、なぜだか、遠くに感じた。
「いいな、夏祭り。どこでやってんの?」
「緑町なんやけどね、下町のお祭りで
すっごい盛り上がるって雑誌に書いてあった!!」
緑町か、
果歩んちの近くだよな、
あいつも、行ってんのかな、
「へー、
楽しそうじゃん。」
なんだ、俺。
二重人格みてぇじゃん。
「キィちゃん、浴衣着て?」
「浴衣は百合子が着てんの見る専門でいいわ。」
「えぇ?!
あたしもキィちゃんが着るの見る!!」
「はいはい、気が向いたらな。」
目を合わせて、微笑みあって。
恋愛で幸せって感情を持つの久しぶりだな、なんて思って。
だけどどっか、心にぽっかり穴が空いてて。
それでも、浴衣どこにしまってあったっけな、なんて考えてる自分が気持ち悪い。