なつものがたり






「お待たせ、」



バイトでクソ忙しい一週間を終え、バイトから急いで帰宅。


浴衣を着て、百合子を迎えに行く。








車はなんとなく使いたくなくて、駅で待ち合わせをした。










「きぃちゃん、遅い!」









白い生地に濃いピンクと紺色や淡い黄色の柄模様の浴衣。


濃いピンクの帯に、薄いピンクの細い帯。



白とピンク色の花の髪飾り。







「綺麗だな。百合子。」




自然と口から、こぼれ落ちた言葉。

見事な浴衣姿だった。









「きぃちゃんも、めっちゃかっこええ。」






少し、俯きながらいう彼女は頬が紅くて、まるで少女のようで、俺を捨てた女と同じ人間とは思えなかった。











いつかまた、この浴衣姿さえ苦い記憶に変わるんだろうか?




< 28 / 92 >

この作品をシェア

pagetop