なつものがたり
「お待たせ、」
バイトでクソ忙しい一週間を終え、バイトから急いで帰宅。
浴衣を着て、百合子を迎えに行く。
車はなんとなく使いたくなくて、駅で待ち合わせをした。
「きぃちゃん、遅い!」
白い生地に濃いピンクと紺色や淡い黄色の柄模様の浴衣。
濃いピンクの帯に、薄いピンクの細い帯。
白とピンク色の花の髪飾り。
「綺麗だな。百合子。」
自然と口から、こぼれ落ちた言葉。
見事な浴衣姿だった。
「きぃちゃんも、めっちゃかっこええ。」
少し、俯きながらいう彼女は頬が紅くて、まるで少女のようで、俺を捨てた女と同じ人間とは思えなかった。
いつかまた、この浴衣姿さえ苦い記憶に変わるんだろうか?