なつものがたり
さすが、雑誌に特集されるほどのお祭りとあって人がごった返していた。
「ちゃんと、手つないどけよ。」
「うんっ」
とりあえずは人ごみを避けながら、百合子が食べたいと言ったあんず飴を買い、俺はイカ焼きを買い、座れる場所を探す。
やっと、見つけたベンチで「ふぅ」、と二人してため息をついた。
「すげぇな、人。」
「ほんま、すごいなぁ。
けど、リンゴ飴食べれるから満足やぁ。」
ニコーっと笑いながらリンゴ飴を食べる百合子を見て、頭のどこかに追いやっている 果歩の笑顔 を思い出した。
「俺、食べ物を幸せそうに食うやつって好きだな。」
嘘は、言ってない。
ただ、、。
「えー?それって喜んでええの?」
「喜べ喜べ、」
そう言って、百合子の頭をポンポン、と叩く。
なんで、出てくんだよ。
俺が今、手に持ってるイカ焼きだって。
果歩は幸せそうに、食ってた。
なにをするにも、一緒に過ごした時間が長すぎて思い出が、ふと蘇ってしまう。
親友の喪失は、ちょっとした失恋と同じってか。
隣にいる百合子の顔を盗み見ると、一生懸命にリンゴ飴にかぶりついている。
百合子、俺たち、今度こそ幸せになれんの?
心の声は届くはずもない。
「他に、なんか食いたいもんとかある?」
「んー、きぃちゃんは?」
「じゃがバタ食いたいな、」
「いいね。あたしあんま食べたことないなぁっ!!買い行こっ?」
「また、人混みだけど大丈夫か?」
と、百合子の携帯が鳴る。
「あ、電話!出てもええ?」
ああ、と頷き、
近くにいると聞き耳を立てる様で居心地が悪い。
そう思い、少し百合子のそばを離れた。