なつものがたり
「ほら、立つ!!侑くんは出てって!」
「チー姉、ここ俺の部屋でもあるから」
「あんたの姉ちゃん今から浴衣着るの!
見たい?このペチャパイを!」
「へいへい。」
弟の侑が部屋から叩き出され、
あたしは無理やり叩き起こされ、
こんなことをする張本人、幼馴染の千尋が目の前にいます。
目をギラギラさせて。
「お祭りダブルデート、付き合ってよー!お願い!!」
と、訳のわからない電話をもらったのがさっき。
ほんとにどいつもこいつも
突然すぎる。
「お祭り費用は男が出すって!
ね?イカ焼きもトウモロコシもお好み焼きもいくらでも食べていいから!」
そんな提案に乗ったのが間違いだった。
浴衣なんて聞いてねーよ!
あたしゃ、失恋真っ最中なんだよ!!
しかし、千尋が一度言い出したら聞かないことは20年の付き合いで分り切ったことだし、されるがままになる私。
浴衣なんて、この髪を短くしてから初めてかな…。
「どーなのよ、連絡あったの?あいつから。」
「あるわけないっしょ。
付き合ってまだ二週間ですよ、
ラブラブでしょーよ。」