なつものがたり
あー。
なんで車、断ったんだろう。
そんなことなんかわかりきってるのに、そんなことさえどうでもよくなってしまいそうな
うだるような暑さ。
その中を、地元の駅までダラダラと歩く。
変な意地張らずに、快適な車に乗せてもらえば良かった。
今から電話したら来てくんねーかなぁ。
なんて考えるだけ考えて、
「はぁ。」
と、大きなため息をつく。
あたし一人で喜怒哀楽のオンパレード。
それにしても暑い、遠い。
ええいっ!電話してしまえ!当たって砕けろ!
夏の暑さに屈したあたしは、昨日、自分から辞退したにも関わらず希鷹にお迎えお願いコールをすることにした。
一回、二回、
コールがなるたびに、
心臓のドキドキが大きくなる。
「もしもーし」
ー …、も…しも、し?
「希、鷹?」
ー ん~?…果歩?
やばい。なにこれ。
可愛い。
確実に寝起きの声。
「希鷹くん、もうバーベキューの時間ですけど?」
ー ん?
ー は?!…え?!…え?!……まじか!!!?
「もう午後2時デース。」
ー うわー!さんきゅ、起こしてくれて!!じゃ!!
「おいっ!」
プープーという電子音の電話にツッコミをいれる。
あたしゃ、モーニングコールしたわけじゃないっつーの!
だけど、顔はふにゃふにゃと緩んでしまう。
果歩?
と言う甘えた声が頭から離れなくて、
そして冷静になり、ヒヤッとする。
どんだけ、好きなんだろ。