なつものがたり
鳴り止まない電子音は
目覚ましアラームだと思った。
長すぎるそのメロディーが着信音であることに気づき、無意識的に通話ボタンを押す。
受話器越しから聞こえる声が
無性に懐かしく感じた。
昨日は一人で自棄酒をして、
そのままいつ寝たかも覚えていない。
起き上がったら目の前の光景は、
下着一枚の俺が鏡に映り、扇風機だけがアホみたいにクルクル回っていた。
「準備、か、」
あんま気が向かねーけど。
果歩となにを話していいのか。
昨日の電話で、
果歩は、俺と接触することが迷惑っぽい節を感じた。
もう、果歩には俺が必要ない。
そう思うと、腹が立つような、寂しいような、そんな感じ。
普段、一人では飲まない酒をこの部屋の散らかりからして6本、缶ビールを開けたらしい。
つか、気持ちわりぃ。
飲酒運転になるのはごめんだから仕方ない、電車で行くか。
とりあえず風呂に入り、必要最低限の荷物を持ち家を出る。
バーベキュー場についた頃には
日が沈み始めようとしていて
あの一ヶ月前の夕陽と、記憶が被った。