なつものがたり


あー、車でくれば良かった。


この奈良漬どう運んでくれようか、





「果歩、歩ける?」

「ん、」


「飲み過ぎなんだよ、まったく」




「…ごめん」



バーベキュー場から駅までの道のりは、前でドンチャンしているメンバーとは空気が違い、ゆったりと優しい時間に思えた。







「じゃ、また学校で」




カラオケ組にサヨナラをいい、改札へ向かう。






「希鷹…、」

「ん?」








「気持ち悪い…」


「あほか、」



いつもと違い、弱々しい(だからと言って女子らしいわけではないけど)
果歩は面倒くさい以外のなんでもなくて。


けど、どこかそれが妙に心地よくて、










「ほんっと、アホ果歩。


電車に乗れっか?」





「…まだ、むりぃ」


「じゃ、夜風にでも当たりますか。」




駅の近くの公園で、果歩はスポーツドリンクを片手に、俺は果歩のせいで飲み損ねた酒を片手にベンチに座る。






「…寄っかかってい?」




「どーぞ。ご自由に。

あ、肩の上にゲロは吐くなよ、」





「ん」




気持ち悪さが耐えきれないのか

ぐったりの俺の肩にもつれかかる果歩の頭からは少し甘い香りがした。





…こんなとこ、お前の彼氏に見られたらどーすんだよ。










百合子に見られたら、?







そしたら、



そうしたら、。?






< 49 / 92 >

この作品をシェア

pagetop