なつものがたり
「お前の女癖の悪さまた再発したの?」
玄関に入ると、目の前にいる男の人に驚く。
その人が発する言葉にも。
「そういうんじゃないって電話で言ったよな」
希鷹の声がトゲトゲする。
希鷹にそっくりの、切れ長の目に大きな口に綺麗な鼻筋。
違うのは目力の強さ。
なんでも、引き込んでしまうような、ある種怖さを感じる目。
「また、そんなこと言っちゃって。
百合子ちゃんにバレたら大変っすね。
ま、せいぜい気をつけてね、お嬢さん。」
「早く出てけよ、」
希鷹が、辛そうに声を絞り出す。
この根性ひねくれたやつが希鷹の兄貴…?
「あたしからもお願いします。
早く出てって!」
希鷹を、苦しめんなっ!
希鷹に辛い思いをさせるなら、アンタはいらない。
ガンッ
すごい力で拳が飛んで来た。
あたしの顔の横の壁震える。
「調子に乗んなよ、お嬢ちゃん。
わりと可愛いんだから言葉遣いに気いつけろ、」