なつものがたり






「お前の女癖の悪さまた再発したの?」



玄関に入ると、目の前にいる男の人に驚く。
その人が発する言葉にも。




「そういうんじゃないって電話で言ったよな」







希鷹の声がトゲトゲする。

希鷹にそっくりの、切れ長の目に大きな口に綺麗な鼻筋。




違うのは目力の強さ。
なんでも、引き込んでしまうような、ある種怖さを感じる目。





「また、そんなこと言っちゃって。
百合子ちゃんにバレたら大変っすね。
ま、せいぜい気をつけてね、お嬢さん。」




「早く出てけよ、」






希鷹が、辛そうに声を絞り出す。






この根性ひねくれたやつが希鷹の兄貴…?







「あたしからもお願いします。

早く出てって!」


希鷹を、苦しめんなっ!

希鷹に辛い思いをさせるなら、アンタはいらない。






ガンッ






すごい力で拳が飛んで来た。


あたしの顔の横の壁震える。





「調子に乗んなよ、お嬢ちゃん。


わりと可愛いんだから言葉遣いに気いつけろ、」







< 54 / 92 >

この作品をシェア

pagetop