なつものがたり
思い返せば、何かがズレていた。
ひっそりと、けど、確実に。
そのひずみに気が付いたのは、あのドライブの日。
百合子に告白された翌日。
じゃあ、百合子に対する思いはなんだ?
固執?
プライド?
情?
愛じゃ、ない?
「なんか、悩みあるなら言いなよ?
蒲田さんの、こと?」
俺の感情を読み取ったかのように、少し苦い顔で聞いてくる果歩に驚く。
なんで、そんな顔すんの?
笑っていてほしい、いつも2人で笑っていたい。
「果歩には何でもお見通し?」
「まあなっ」
一段と寂しげな顔になる果歩。
この果歩の顔を笑顔にできるのは、俺じゃなく “彼氏” だということを痛感する。
俺がこんなん悩んでることさえ、お見通し?
「希鷹、今から、、無理な頼みするけど、気にすんなよ?」
「なに?逆に、気になるわ。」
「じゃあ、気にしろっ!
…またこうやって、
学校でも話しがしたい、」
淋しそうに呟く。
ソファの上で体操座りをしながら、チューハイを覗き込む果歩は、ただの女の子だった。
一度意識すると、愛おしさしか湧いてこない。
お前を悲しませたくない、お前を笑顔にしたい。
この息苦しさの正体は…
「果歩」
俺が話し出そうとした瞬間、玄関の開く音がする。
そして、現れたのは
俺の彼女、
蒲田百合子。