なつものがたり
そんなわけで
辛うじてシャワーを超特急で浴びスッキリ。
お風呂場から出て、下着にタオルの状態で自室へ行くと希鷹がいた。
「・・・・・・・相変わらず貧乳だな。」
「黙れハゲ!!!!」
弟が招き入れたに違いない。
部屋から廊下に希鷹を追い出し、着替えると、どスッピンのまま車へと連行された。
「別にいいじゃん。すっぴんでも。
ブスじゃねーし。学校じゃすっぴんだし」
「いやじゃ!
お出かけ時は化粧したいんだ!!」
「へーぇー。
で、どこ行こっか?」
「え。ノープランなわけ?」
「まぁね~。」
なんとなくは気付いていた。
違和感。
なんだろう、この違和感。
希鷹が、いつもと違う。
「海、静かな海に行きたい!」
「難しい注文だな」
なんだろう、なんだろう。
そわそわする。
いつもの希鷹と、何が違う?
無意識に希鷹の顔を見つめていたら信号待ちの希鷹と、目が合う。
「ん?なんか付いてる?」
「んいや。」
「なんか。今日、女子っぽい顔してんな。」
すべてを見透かしてるようで。
実はこのあたしの恋心に
希鷹はずっと
気づいてるんじゃないか、なんて思って。
そんなこと思った途端、心臓が苦しくなった。
これじゃあ、ただの希鷹のこと好きな子たちと同じじゃないか。
そんなの、やだ。
特別がいい、
彼女なんかより、もっと
もっと特別ななにか。