なつものがたり
さらにその後ろから
兄貴、大地が顔を出す。
澄ましたツラしやがって。
「 うそ、」
最初の言葉を発したのは、今にも泣き崩れそうな百合子。
玄関から居間へ上がり、俺の顔を見つめる。
何て、言えばいい?
「…っ」
ボヤーっとしている横で果歩が立ち上がり、すごい勢いで歩き、玄関を出て行く。
「果歩っ!!!!!」
…置いてくなよ、
すぐに後を追えないのは俺の弱さ。
残された俺と百合子と、大地。
忘れたくて仕方ない、一つの記憶が蘇る。
「なんで、大地と一緒にいんだよっ」
果歩が行ってしまった焦りと、百合子と大地への不信感が俺の心をかき乱す。